移動する羊 是楽日

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移動する羊による稽古場の一つであり、呟きの場であり、表現の場所 物語・小説・詩・遊び

『雲の語る声が聞こえる』~2026年3月2日(月):目先想創


遠くを見ていた。
思考する。
「羊が云う〈遠く高く深く〉は『広く』へ向かうのではなく、むしろ『狭く』へ向かう意味だったのかもしれない」

旗揚げ前公演『ラジャ・ラウト』で語られた〈遠く高く深く〉は、広く大きくたくさんを、と繋がっていると考えていた。でも逆だったのかもしれない。

限られた中で突き詰める線の、放射の象徴が、まさに〈遠く高く深く〉であった。いつか自分の放射線が、円から球になることをイメージして向かう同時性であった。のかもしれないと考えた。のは、「広く大きくたくさんを、捨てる選択をしなければならない」とふと思ったから。
あの始まりの日々と同じように。
だから今こそ。
遠く。高く。深く。
その同時性を。


曇り空を眺める。
厚い雲。
見ていると、視点収集家の血が動きだす。

僕は今、霧中だ。
あの一寸先が見えない霧に居た瞬間だ。
甘い水の香り。
暖かい冷たさ。
寒い温かさ。
フィードバック。

僕は今、まさに雲の中にいる。
さらに感覚を呼んでいる。
飛行機から見た街と町と海と森と川と雲。
瞬間、空を漂う雲になる。
天空を移動する。
世界を覆い尽くすべく。
まるで遠く高く深いみたいに。
でもすぐに我が身に戻ってしまった。

「いや雲になったことないし…」
別物になるのは難しいよね。
現実的には無理だ。
肉体の物理に抗えない。
けっきょくはおのれのままで。
おのれがゆくしかないのだよ。
きりにもくもにも、ましてやかすみにもすらなれない。
ただ、いっしゅんのくもには、なれる。
なれるのだ。

あまりに厚い雲に、長い時間、眺めてしまった。


愛川武博


by moving_sheep | 2026-03-02 20:11 | 目先そうそう | Trackback