引越しぱーちーエピソード4
電車が止まってしまったその中でも、諦めず彼らは切符を買って改札の中へと集まった。人の飽和が、じっとりとした汗を額に噴き出させる。出口のない迷路を彷徨ように人々が右往左往するなかで、七人の行き先は決まっていた。遠い道のり、たった一度の乗換えが最大の難関になるでろう、まずは新宿にゆくのだ。そこから中央線に乗り、引越しパーティーの愛川家へと目指す。
彼らは、唯一動き出した埼京線のホームへと階段を上っていった。改札の思ったよりの人の少なさに安堵しながら、しかしすぐに、その壮絶な状況をまのあたりにしたのだった。階段を上りきったホームには先端のほうまでギッシリと詰め込まれた、人のスシ。
ホームの一番後ろから見たその先は美しい程の、人の溢れ。
武博は思った。
「なんという美しさだ」
これ程までに溢れる人々。まさにそう『あ・ふ・れ・て・い・る』のだ。ホーム、ギリギリに立っている人々はたった半歩で、今の立っている場所を逸脱してしまう危うさ。ざわついていて、それでいて静かな狂気にも似た、集団の意識。確かにそこに存在しているのだ。
昭彦は苦笑いをした。確かに笑うしかなかった。
麻衣子は楽しくなってきた。ここまでくると、地震の影響の行く末が何処まで行くか見てみたいという思いに、自然に笑みがこぼれる。文江は諦めに近い「だからよ」と一言。やぶさかの二人は流れに任せ自然体だ。そして潤は思っていた「バッテラ食いてぇ。ああ鱒寿司でもいいや・・・」
そうこうしているうちに、ホームギリギリで皆を押さえていた駅員の横を、ゆっくり、とてもゆっくりと電車が入ってきた。その緩やかな動きは、まるで地を這う巨大な蛇のように見えた。
そこに群がるように人が乗り込んでゆく。顔を歪め、身体をねじり、それでも人々は乗り込んでゆく。彼らはその流れを、冷ややかに見つめた。もう一本電車を待つことにしたのだ。
そうして確実に新宿に向かう彼らに、非情な別れが新宿で待っているとはこの時誰一人として予想していなかった。そう別れは突然やってくるものなのだ。
まて次号。新宿から東小金井までの波乱に満ちたそれぞれの、道。

