移動する羊 是楽日

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移動する羊による稽古場の一つであり、呟きの場であり、表現の場所 物語・小説・詩・遊び

『真実の嘘』~2025年11月24日(月祝):目先想創


「君は無意識で感受する…のだろ?ならば…」
……ならば?
彼の言葉の先を待つ。
しかし次はやって来ない。
長い。長い沈黙に驚く。
わざと、なのか?と思ったが違った。
「いや、やめとこう」
いやいや伝えてくださいよ。
そう思いながらも笑顔で頷く。
自分の社会性が弱まっている。
いつもの己なら「え~?」なんて言う。
言いながら話の内容を尋ねるだろう。
しかし僕はただ頷くだけだった。
すると彼も笑顔になった口が小さく動いた。
まあ いい か ……。
そう見えたように思えた。
彼は語る。

「敵は作らない方がいい。君が元気に成れるのは、おそらく比率、割合、エネルギーの感受の影響だと思うから。憎む人が増えるか、応援する人が増えるか、それだけで君のパフォーマンスは大きく変わる。応援する人が目の前に居る、居ないじゃない。それは関係ない。だって人は巧妙に嘘をつくからね。真実は嘘をつくからね。心の動、心動の感受こそが君の本領発揮だからね。嘘は違和感になって、きっと君を少しずつ殺してしまうから。だから……だからさ………増やすしかないよ。君は君の味方を。ね」

長い。また長い沈黙に驚愕する。
だから僕は静かに思考した。

「なるほど。そういうことも有るのかもしれない」。素直に思った。正確には覚えていない彼の言葉へ、意訳が入っているとはいえ思った。でも同時に考えた。「遮断すればいい」と。「関わらなければいいじゃないか」と。その時、遥か昔、誰かに言われた言葉が蘇る。

『本当に君は人が好きだよね』

「………そういうことも有るのかもしれない」

頭の中で昔の誰かに返した言葉がふと口に出た。
僕の言葉を聞いた彼は言った。
「あるよ。だって君は人が好きだからね……」
目を閉じる。
心も閉じる。
僕は暗渠に涙を流す。
大海へ、いつしかこの涙が流れることを思いながら。


愛川武博             目先物語


by moving_sheep | 2025-11-24 19:33 | 目先そうそう | Trackback