『汽水魔人』~2022年12月19日(月):目先想創
冬眠魔人がやってくる。
躰に棲む。
魔人は云う。
「我は魂と体の混ざり合う、小さな重なりに生きる汽水なり」
僕は問う。
「小さな重なり?それはつまり『心』という事ですか?」
魔人は答える。
「まさに、それは心という領域である」
僕はさらに問う。
「それは心が睡眠を誘うということですか?」
魔人は答える。
「否。心は誘わない。いざなうのは我だ」
僕は理解する。
「つまりあなたは心に棲んでいて、あなたが眠りを誘発させている」
魔人は歌う。
「いかにも♪いかにも♪いかなる者でも我を排除することは出来ぬ、は、何故なら♪なぜならば、そう、我は、汽水、なる、ゆえ♪」
僕は歌を聴きながら思う。
冬眠魔人は汽水。
ならば汽水魔人でもいいじゃんっ。
海水と真水の混ざる人。
塩水と純水。
僕を睡眠へ誘う、悪魔。
「我は君のメシアである」
「あなたは、きゅうせいしゅ、である」
「我は魔人である」
「あなたは、まのひと、である」
僕は頭の中で記す。
〈つまりあなたは汽水である〉
汽水は言った。
「いかにも我は汽水である」
目が覚めると昼過ぎなので、驚愕した。
あまりの驚愕と草臥れに、しばらく青空を見ていた。
昨日の24時から28時の間に見た夢を思い出す。
遠く離れたあの人からの電話。
僕は買い物をしていた。
突然の着信。
彼女だった。
明るい声で僕に話しかけてくれる。
途中で切れてしまって、店を出て、歩きながら、着信履歴からかけなおした。
「良かった。愛川君にはお世話になったから。だから」
僕は「もう一度、一緒にやれるってことだね」的なことを伝え、返事を待っていたが、返事を聞けぬまま目が覚めた。
聞けなかった。
彼女はいったい何を伝えたかったのだろう?
どうしてずっと音信不通だったのに、連絡をくれたのだろう?
僕は思った。
「彼女は、死んでしまったのかもしれない…」
体の死か、心の死かはわからないけれど、僕にはその電話はサヨナラを伝える連絡だったように感じた。
音楽をかけ。
紅茶を飲み。
パソコンを開き。
創るべく。
ゆっくりと動き出す。
眠い。
眠いけれど、少しでも、少しずつでもいいから、形にするために動き出す。
とても眠い。
魔人がささやく。
「眠るといい」
大丈夫眠るよ。
頑張れるとこまで頑張ったら、思いっきり眠る。
魔人は何も答えない。
僕は記す。
とにかく記す。
記すのだ。
愛川武博

