稽古場情報 終わらな​い歌が世界に響く、終​わらない旅

誰もいない車内に音楽が流れた。

僕は自分が乗っている車両に人が居ないのを確認してから、連結部分のドアの向こうを、少し腰をあげて覗いた。

黒い長いポンチョのようなコートを羽織ったその下に、白と黒で構成されたフリフリの服を着た女の子が、高いヒールの黒ブーツで、コツコツとリズムをとりながら胸に抱えた小さなiPodラジカセから歌を鳴らしていた。




なるほど。

僕は彼女が隣の車両で一人、世界に向けて音楽を放っているのを確認したあと、なぜか背筋を正して座りなおした。

そしてその音楽を聴きながら、晦日の21時過ぎの都内に向かう総武線の一番後ろの車両で、まるで映画の登場人物かのような心持で、流れてゆく窓の外の風景を見る。
心を歩かせてみる。


街は、明かりが灯っていた。
川は、雨でキラキラしていた。
窓に、自分が映っていた。
流れる世界と、ここに居る、己と。


そんな状況で、一年を考えるなっていうのが無理だ。
晦日だもの。

あと26時間ちょっとで2012年が終わるもの。

案の定、自然と一年を振り返る。



2012年、僕は人生においてとても重要な選択を二つした。
未来へ、本当の意味で向かうために必要な、選択。
正確には選択したものを、実際に“行動をした”、なのだが。


しかし同時に己の愚かさに、堕ちた。
そのことは誰も知らない。
本当に、誰も、だ。


他者の痛みも絶望も孤独も、僕が本当に理解することが出来ないように、誰も自分のソレを理解できないだろう。

でも這い上がった。
己だけの絶望から、一人で、多大の傷を作り、それでもなんとか這い上がってきた。
またソコに堕ちるかもしれないという恐怖を抱えながら、先に行くしかない。

本物の絶望はいつも、むしろ絶望と気がつかない。
僕は同化する前に気付くことができた。
少しは経験が生きているみたいだ。
だから「ラッキー」と言ってみることに、した。


そして変なハナシだが、こんなに人を笑わせた年は、今までに、ない。
笑ってくれる人のために、笑ってほしい人のために、僕は歌い、踊り、語り、笑った。
電車と共に思考が走る。
僕はふと車内に誰も居ないことをいいことに、流れている歌を口ずさんだ。
なんとなくしか知らないその歌を、それでも歌ってみた。

あれ?

僕はもう一度、腰を浮かせ、隣の車両を見た。


彼女が歌っている。

それもそれなりの声で。


『歌うんかい!』
と心の中で突っ込んだ。

「ま、僕もうたってるんだけど」
口に出して自分に突っ込んだ。
うんまあ、誰も居ないしね。


次の瞬間、電車が、止まる。

すると結構の人数がぞろぞろと乗車してきた。
そうか、さすがにこの駅まで来ると人はそれなりに増えるのね。
納得しつつ、目を閉じて座りなおした。

ささやかな非日常から日常へ、僕は帰る。


まるでソレに呼応するかのように、音楽が、消えた。

それなりに常識はあるのね、彼女。
歌ってたけど。
歌っちゃったけど。
だって誰も、居ないし、世界に音楽が溢れていたし、うん。
僕らは、瞬間を謳歌したね。


僕はひと呼吸ついて、窓に顔をはりつけ、また窓の外を見た。

電車は走る。
景色が流れる。
雨はやんでいる。
窓に映った自分は見えない。
もう、昔のことは考えていなかった。


この先へ。
この先へ。


決して死なないように、殺さないように、己に負けないように、あがきながら。


でもまずは、今からやる年末麻雀に負けないように、しよう。
そう思ったが結局、8年ぶりにやった麻雀は負けてしまった。
トホホ。

そのようにして今までのオノレを引き連れ、また新たに、始まる。
愛川です。


今週の稽古
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1月4日(金)
17時30分~21時30分
南長崎第一区民集会室

1月5日(土)
9時~12時
要町第一区民集会室

1月6日(日)
9時~17時
東長崎第五区民集会室


基本稽古内容
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@基礎訓練(アップ・体幹・身体トレーニング)
@ミッシングウォーク(羊メソッド)
@テキスト作品作り


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今年の稽古始めは今日!
もう少しで(>_<)
掲載が遅いスミマセン(;´д`)

来週は金曜日夜、土曜日朝、日曜日朝昼、月曜日朝昼です。

んでもって稽古場情報(ほぼ週刊愛川ですが)はしばらくお休みします。

3月公演に向かって。

でも稽古場はいつでもオープンなので、ツイッターとかでは毎週稽古場情報は流しますので、よろしければ確認していらしてくださいませ。

ブログも更新(たぶん)するのでお暇な時は覗いてください。

未だに役者が確定していないので(ギリギリなので来週頭までには決めますが)、飛び込みでやりたい人が居れば是非ご参加ください。

やや、役者やりたいが役者やるかどうかの判断がまだ、の人が一人二人いるので、たくさん候補ある脚本のどれを書き進めるか、まだ中途なのです。
ゆえに。

何はさておき、今年もよろしくお願いします。

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稽古場は誰でも参加出来ます。

いつもだいたい池袋周辺で稽古。

興味のある方は愛川武博(loveriver@di.pdx.ne.jp)まで『稽古場参加希望』とタイトルに書いてメールください。

テキストを用意したいので、来られる方はお早めにご連絡ください。

勿論、当日ヒョイと来てもらっても構いません。


皆様、気軽にいらしてくださいませ。

by moving_sheep | 2013-01-04 14:10 | 稽古場レポート | Trackback
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移動する羊による稽古場の一つであり、呟きの場であり、表現の場所 物語・小説・詩・遊び


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