繰り返し繰り返し僕の心に響く音楽

目の前の少女がなんだか僕をひたすらに見つめていました。
電車の中の、今朝の出来事。



肩甲骨の下まである長い細い髪。瞳は大きく二重でキラキラしている。眉はしっかりとして長い。細い鼻筋に、まるで彫刻のように厚いラインのしっかりした唇。

きっと彼女は美人さんになるだろうなーと思えるような、しっかりとした顔立ちの、それでもやはり幼い無垢な表情の女の子。
小学校に入る前くらいの子だろうか?

彼女はおそらく東京駅あたりから、西東京に向かっているのだろう。
母親の横で僕がお茶の水で中央線に乗って座席に座った時から、僕を見つめているのです。
僕はよくそのくらいの女の子にミツメラレルので、あまり気にしていませんでした。
しかし、飽きもせず、ひたすらに僕を見ている。
何度も目が合うので、何回目かの時に、なんだか無視しているみたいだったのでニコッと笑ってみました。

女の子の満面の笑顔。

あっカワイイ。
僕の笑顔に返ってきた笑顔は、無邪気な可愛さと圧倒的な美しさを持っていました。

まるで音楽みたいだ。

僕はその時、戦場カメラマンの渡辺陽一さんの、戦場で必ず撮っているという子供たちの笑顔の写真を思い出しました。

戦場で死と隣り合わせだからこそ、生きることに真っ直ぐな子供たちの笑顔。
優しい笑顔。
素直な笑顔。
瞬間に輝く笑顔。

そしてそれからもひたすらに僕を見つめている彼女。

何故だかこれくらいの年の女の子にはモテるんですよねー。
昔から。
いやこれをモテると言っていいのかワカラナイですけど。
でも昔っから。
ああ、大人の女の子にモテたいっ。
む、あれか?
つまりこれくらいの精神年齢の大人の女性にならモテるんじゃね?
おーイイねー。
いるかっ、そんな人。
いや、いる。
すべてではないけれど、瞬間の少女を持っている女性はいるです。
あーそういえば好かれるかも。
身に覚えが、ある。
まるで少女のような女性。
いいじゃないかいっ。
そうかな。
好きだけどさ。
でも。
だからさ。
つまり。
大人にモテる大人になりたい。
むしろ大人になりたいっ。
ウオー!

その時、彼女が苦しそうに上半身を倒しました。

そして母親の腕を軽くたたきました。彼女の母親は慌てることもなく、カバンの中から薬と水を取り出し彼女に飲ませました。2分くらいの短い時間だと思います。彼女はまるで息を止めているかのように瞳を閉じて、何かに想いを馳せているみたいでした。
ほんの少しの時間だけ、時間を止めたような。
時間を止めたいような。

でも僕にはとてもとても長い時間に感じました。

彼女が瞳を開けた時に、電車は東小金井駅に着きました。
僕は立ち上がりました。
彼女はまた僕を見ました。
僕も彼女を見ました。
いえ、僕はずっと見てました。
彼女の真っ直ぐな瞳。
僕の迷い。
彼女の中の戦場。
僕の決意。

僕は再び笑いかけました。

そうして彼女は僕に向け、生きることに真っ直ぐな満面な笑顔をしてくれました。

母親が僕に軽く挨拶をしたようでした。
ささやかに。
僕も軽く挨拶をしました。

彼女はただ僕を見つめていました。

笑顔で。

戦場に咲く花のように。

タケケ

by moving_sheep | 2011-01-05 23:56 | takeke | Trackback
line

移動する羊による稽古場の一つであり、呟きの場であり、表現の場所 物語・小説・詩・遊び


by moving_sheep
line
カレンダー