稽古場情報  ゴールデン街からの電話

彼女はいつもゴールデン街の帰り道、僕に電話をくれる。ゴールデン街とは新宿にある狭い地域に、たくさん店がひしめきあっている飲み屋街のことを言う。彼女の家は新宿から歩いて帰れる場所にあって、よくゴールデン街に一人で行くらしい。マンガ雑誌の編集の仕事をしていて、なんだかフワフワとして、でも行動的で、ジブリが好きで、よく時間が空くと一人で飲みに行く。僕は彼女とは一度だけ飲んだことがある。まだマンガ雑誌の編集をしていない時だった。僕の家の近くで飲んでいた。そしてひとしきり飲んだら彼女は「家に連れてけ」と僕に言った。まあ別に構わないので、連れて帰った。お酒に強い彼女は、まだまだ飲み足りなさそうだったが、とりあえず家では飲まないで話をした。色々な身の上話を彼女から聞いた。それはそれはビックリするような話ばかりだった。彼女の人生は波瀾にみち、悲しみにあふれ、そして常に前向きだった。どんな底辺を歩いても、彼女は強く明るく笑っていた。僕は朝7時から仕事があったので、かなり寝不足で仕事にいった。フラフラだった。とりあえず寝ている彼女はそのままおいていった。僕は遅くまで帰って来なかったのだが、彼女は夕方近くまで家にいたらしい。とても居心地が良かったみたいだ。実はそれ以来彼女とは会っていない。でもたまに思い出したように電話がくる。いつものようにゴールデン街から電話がきたとき「何故いつもゴールデン街で飲んで帰る時に電話してくれるの?」と聞いたことがある。確かに家まで帰る間に、時間があったりするからだろうけど、何故わざわざ僕なのか?ひょっとしたらゴールデン街という場所も関係しているのかもしれない。僕は一度だけゴールデン街に飲みに行ったことがある。そこは知らない人同士が狭い店内で飲み、会話している。勿論、仲間で来ていたり、カップルで来ていたりもしているけれど、一人で飲みにくる人がとても多い。なんだか独特の世界観がゴールデン街には溢れている。僕は自分の生まれた島のことを思い出した。狭い場所で世界がなりたっていながら、海というあらゆる場所に繋がっている世界。排他的で友好的な。そんなところから届く彼女のなにげない日常。その電話のむこうで彼女は笑いながら僕の質問に答えてくれた。「イトオシクなるからだよ~」どんなくだらない話でも構わない。どんな酔っぱらっていても構わない。どんな真夜中でも構わない。好きな時にかけてくれればいい。気の向くままに喋ればいい。彼女は笑いながら孤独を生きている。僕はそんな彼女にいつも励まされている。気まぐれな真夜中のゴールデン街からの便りを待っている。愛川です。

次回の稽古は2月13日の土曜日の13時ー17時です。

場所は東池袋になります。。(いつも池袋周辺で稽古)

稽古は毎週、集まる人に合わせて脚本を書いています。
基礎トレと移動する羊オリジナルメソッド(かなり心と身体を使う)とテキストで作品作り。

興味のある方は是非、愛川のアドレスに「稽古場参加希望」とタイトルに書いてメールください。
アドレス。
loveriver@di.pdx.ne.jp

by moving_sheep | 2010-02-06 17:03 | 稽古場レポート | Trackback
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移動する羊による稽古場の一つであり、呟きの場であり、表現の場所 物語・小説・詩・遊び


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