移動する羊 是楽日

kohitsuji.exblog.jp

移動する羊による稽古場の一つであり、呟きの場であり、表現の場所 物語・小説・詩・遊び

稽古場情報  笑顔の行方

ある男性が僕に語ってくれた話がある。ある女性のことだった。その彼はある意味において、僕にとっては“特別”な人だったので、なんだかとても気になった。いつも無邪気な顔で笑う人だった。それでいて少し悲しげな瞳をしている人だった。その話はだいたいこんな感じの話だった。『その人は素晴らしく美しい笑顔をする女性であった。化粧はしていないのだろうか。でも眉も唇も自然な色と形でむしろ好感が持てる。肌は若さゆえか、弾力がありキメがこまかい。とはいえ実際の年齢は分からないのだが。あまりにも化粧っけがなく、童顔な顔立ちだから勝手に若いんじゃないかなと思っているのだけど、女性の年齢ってあまり分からないから、ひょっとしたらそんなに若くはないのかもしれない。どちらにせよ実際の年齢はあまり関係ない。その“若さ”は、事実としてそこにあるのだから。そしてそれが素晴らしく美しい笑顔に関係しているのだから。“若さ”ゆえの危うさをともなって。そのひとを初めて見たのは4ヶ月くらい前のことだった。2週間に1回、僕はある場所に通わなければならない。それは長いこと決められた用事だった。だから日常になっていて、心が変化することのない習慣だった。そこに突然、彼女が現れたのだ。何故今まで彼女と出会わなかったのかは分からない。それまでは僕が行く時間帯と彼女の居る時間帯が違っていたのかもしれない。それとも彼女が新しくその場所にやって来たのかもしれない。どちらにせよ突然僕は彼女に出会ったのだ。そしてその瞬間、彼女の笑顔を見る。それはかわりばえしない日常に飛び込んできた、神様からの贈り物だった。なんて美しい笑顔なんだろう。そう、それは、可愛い笑顔と表現しても良いのかもしれない。でも可愛さだけじゃない。何かが芯のほうにある、ある種の人間に存在する美しさだった。僕は知っている。それを知っている。ああ、そうだ、昔、僕の前からいなくなった女の子と同じ美しさなのだ。その女の子はその美しさをたずさえたまま、病院に入院してしまい、長い治療に入り、僕らはまるっきり連絡をとらなくなった。正確にいえばとれなくなった。彼女の意思か家族の意思か、僕とは連絡をとらないことを決めたのだ。その時僕は失ってしまったのだ。そして僕はその時、こちら側にいることを決めた。彼女が望むのなら、しかたのないことだと自分に言い聞かせた。その女の子に似ているのだ。顔、形がじゃない。芯が似ているのだ。何故だろう。その笑顔の美しい彼女も何か、抱えて生きているのかもしれない。僕はどうしても彼女のことが知りたくなった。いや、それは知りたいのじゃない、知らなければならない、のだ。だから僕は話しかけてみようと思うんだ。その先に何があるかは分からないけれど、僕は再び手に入れようと思うんだ』そう言って彼は無邪気に笑ってみせた。彼は彼女に声をかけたのだろうか?その後のことを僕は知らない。何故ならそれから彼には一度も会っていないからだ。連絡をとっても何故だか連絡がとれない。年末なので連絡をとってみたが、まるっきり連絡がとれない。今では連絡のとりようすらない。まるでこの世から突然いなくなってしまったみたいに。いや、ひょっとしたら本当にいなくなってしまったのかもしれない。それこそ、あちら側に行ってしまったのだろうか。僕はふと思う。彼はきっと「何か」をみつけたんじゃないかと。だからそのために連絡がとれなくなったんじゃないかと。ひょっとしたら彼は今、桃源郷にいるのかもしれない。何処か遠く、遥か遠くの場所に。もう二度と会えない場所に。失った「何か」と共に。それでもまたいつか会いたいと思う。そして彼の笑顔を見たいと思う。あの無邪気な笑顔を。それでいて少し悲しげな瞳を。愛川です。

今週の稽古は12月19日の土曜日の13時ー17時です。

場所南池袋になります。。(いつも池袋周辺で稽古)

稽古は毎週、集まる人に合わせて脚本を書いています。
基礎トレと移動する羊オリジナルメソッド(かなり心と身体を使う)とテキストで作品作り。

興味のある方は是非、愛川のアドレスに「稽古場参加希望」とタイトルに書いてメールください。
アドレス。
loveriver@di.pdx.ne.jp
by moving_sheep | 2009-12-17 11:38 | 稽古場レポート | Trackback